そいえばAC5のムービー出てたね

友人は言った。
「ACはオープニングムービーを楽しむもの」
と。
これは基本的なシステムが変わらないACをちょっと皮肉って言ったものではあった。
ACの伝統的な基本システムは「当たらなければどうということは無い」って奴だ。これは個性を出す為に考えられたシステムで、ACは当たらないに焦点を置いたゲームだ。それが面白いと思っている人がACをやっているのだろうし、私もその一人である。
ただ、この「当たらなければ」ってシステムが非常にオンラインでは都合が悪い。
それはつまりこうだ。
流行のリアルタイム、つまり時間の即時性を求めれば求めるほど、ラグと省略して呼ばれている時差が大きく影響する。だがラグはどうにもならない。ラグを無くすには、それこそテレポートといったような代物が必要になってしまう。
判定はゲームを成り立たせる条件だが、リアルタイムが時間という概念なので、時間と判定を組合わせた当たり判定はリアルタイムと密接な関係がある。
その為、当たるかどうかはリアルタイムを求めたゲームならどんなゲームでも重要だが、当たったように見えたものが当たらないとか、避けたものが当たったとなると当然不満が出てくる。自動販売機にお金を入れたのにジュースが出てこなかったようなものだ。

この「当たらなければどうということは無い」を変えるにはどうしたら良いか?

パターンは幾つか考えられるが、基本的には「当たっても良い」システムにすることだ。
実力があったとしても当たる時は当たるようにすれば良い。そして当たってもそれが結果に大きく響かなければ良いのだ。
これを最近のゲームは良く理解していていて、当たっていなかったとプレイヤーにわからせないように見せかけている。例えば、弾は速過ぎて相手が何処を撃ってきたかなんて分かりやしないし、当たりやすくする為に相手の動きに合わせて照準がずれていくようにしても良い。いや、距離を狭めて視界を狭くすれば的も大きくなる。まあ、ここまでされたゲームを私は好きではないけどね。
この「当たっても良い」システムを使い、やられても直ぐにやり直しが出来るようにすれば、体感的なラグの影響を大多数が甘受出来る範囲にすることも出来るだろうし、相手が多過ぎて誰にやられたかもわからなければ理不尽さの憤りが特定の個人に向く事も無い。

これと正反対に位置したのがACの基本システムだ。回避が重要で、対戦の基本は1対1。その為、プレイヤーはラグを強く、しかも特定のプレイヤー相手に感じる。
もっとも、理不尽さに憤りを感じたのでそれを特定の個人に向けるのは、雨の中で傘もささずに濡れたので偶々そこにいる目の前の人に文句を言うようなものだ。そのような人間は相手が傘をさしてキョトンとしているのに相手が言い返さないのを満足して別の場所でまた文句を言うのである。キョトンとしている人はその光景を暫く眺め、さっさとこんな場所からおさらばしようという気分になる。
残ったのは忍耐強い人間か、お互いを罵る人間ばかりだ。その界隈に新しく来た人間は怯えて逃げ出してしまうだろう!

このような問題をACは抱えているが、どうしたら良いのだろうか?
例えば、メックウォーリアーというロボットゲームがある。このゲームは軽量級から重量級までの複数のメック(ロボット)がいて、それの武装や装甲を自分で選択して対戦する。この辺りはACと全く同じだし、そもそもACの方が歴史が新しい(多分)。対戦は複数人で戦う事が出来て一騎打ちは無い。機体は遅く、敵の弾はまず回避出来ない。機体はかなりの強度があり、一定の弾を受けても大丈夫になっている。
だが、相手を撃破する条件が問題だ。お互いに一定のダメージが入る。同じ時間に同じだけのダメージが入るならば装甲が厚い方が勝つ。
結果的に、一番装甲が厚くて重いメックしか戦場にはいなかった。重量毎に撃破ポイントが用意されてたが、物好きでもなければ好き好んで弱いメックを使わなかったのである。これでは武装や装甲を自分で選択する意味が乏しい。それならいっそ、格闘ゲームでも良かったのだ。

他の例では、ネイビーフィールドのようなゲームがある。このゲームは同じように軽量級から重量級までの複数の艦船があり、それの武装や装甲を自分で選択して対戦する。対戦は実質複数人のみで、重量クラス毎に出撃制限が有り、理論上は最大256人で対戦できる。各クラスに火力・装甲のランク差があり、下位ランクが上位ランクを1対1で倒す事は基本的に無い。例えば、ネイビーフィールドには視界の概念があるのだが、駆逐艦の視界・射程の3倍の遠距離から戦艦の砲撃が届き、直撃すれば駆逐艦は一発で沈む。また、かすったとしてもダメージによって機動力が失われ、ただの的と化す。一方、駆逐艦が戦艦に肉薄して砲撃を行ったとしても、1対1では実質として戦艦はノーダメージで近距離から高い命中率の砲弾が駆逐艦を襲い、何も出来ぬままやられる。だからといって駆逐艦に役割が無い訳ではなく、特攻によって戦艦を沈める事も稀に出来たし、対空砲の要因として戦艦や空母を敵空母の航空機から守る事が出来た。
但し、それでも誰しもが戦艦や空母を使ってみたいと思うのは当然である。ここで制限が、人間をふるいにかける仕様と化す。つまり、下手な人間が強い艦を使うなということであり、「重量級問題」とでも呼ぼう問題を解決できない。

この問題は「相手を撃破する」という条件を変えてあげれば解消できる。
つまり、撃破することには強いし価値があるが、それだけでは目的を達成出来ないようにすれば良い。
これを取り入れたのがクロムハウンズなのだが、実はそれ程大げさにしなくてもこのようなシステムは簡単で面白いものがある。
ワームやポトリスといったゲームである。
ポトリスは機体を構築する事は出来ない。ただ選ぶだけだ。攻撃手段は角度を決めてスペースを押す長さを調整するだけ。そして移動もアイテムを使用しない限りは左右にしか動けない。相手に弾を命中させて撃破すれば勝ちだが、攻撃によって地形を壊して相手を落として倒すも出来て、これで機体毎の個性を作っている。基本はターン製だが、アイテムを使用したり自分のターンで時間を掛け過ぎるとターンが回ってくるのが遅くなるといったゲームだ。
ルールは簡単で誰でも出来る。データも複雑ではないので処理も軽いのでサーバーを用意することが出来る。ラグも殆ど影響しない。クロムハウンズでやろうとしていたことの大半が、複雑さと引き換えに出てきてしまった助長の為の面倒な作業無しに実現出来てしまう。

結局のところ、システムをもっと簡略化してある程度リアルタイム性を犠牲にするべきではないかと思う。
それについては今は既に無いが銀河英雄伝説VII辺りが参考になるかと思う。これも同様に相手を倒すゲームで「重量級問題」のもっと深刻な物を抱えていた欠陥品なのだが、「行動入力に対して結果が遅く実行される」という点が重要である。
行動入力はリアルタイムだが結果がずれるのでずれがラグよりも遥かに大きければラグの影響を殆ど受け付けなく出来る。又、先読みが利くのでプレイヤーとしてはリアルタイムで動いているのと同じ感覚になれる。RTSと近い方式だが、アクションにはよりこちらの方式が向くと思われる。